
夕飯の片づけを終えたあと、妻と一緒にリビングでコーヒーを飲みながらのことでした。子どもの部屋から聞こえてくる針が落ちるような静けさ。ふと覗いてみると、娘は床に映る木漏れ日を不思議そうに指で追っていました。
「この光、食べられたら甘い味がすると思う」と呟く声に、ふたりで顔を見合わせて笑った…あの瞬間を覚えていますか?
子どもの興味の芽はいつだって、そんな予測できない場所から生まれてくるものですね。
好奇心の種は突然に

子どもが夢中になっているものを見つけた時、その表情はまるで宝物を発見した探検家のようです。
公園の石ころや、夕焼けの色の変化、洗濯物をたたむ時の布の感触…普段は通り過ぎちゃうような小さなことに、なぜか強い興味を示すことってありますよね。
うちの子が水道から落ちる水滴を30分も観察していた時のこと。最初は『早くお風呂に入りなさい』と言いかけたのですが、ふと妻が横にしゃがみ込んで一緒に見始めたんです。
「確かにキラキラして綺麗だね」とそっと呟いたその声が、子どもの探究心にそっと風を送る様子を見た時、はっと気づきました。
子どもの『なぜ?』に答えるのが大切なのではなく、その瞬間を一緒に感動できるかどうかなんだと。
大人の予想を優しく超えて行く

絵本を読み聞かせている時、子どもの反応がいつも私たちの想像を軽く飛び越えますよね。
主人公の危機よりも、背景に描かれた小さな虫に夢中になったり。『勉強しなさい』と言いたくなる気持ちをグッと抑えて、夕食のテーブルで宇宙船のお話に付き合ってみたり。
実はあの時、妻が子どもの話を遮らずに最後まで聞いていたことで、娘の自作ロボットの構想がどんどん膨らんでいったのを覚えています。
子どもが何かに熱中している時、私たちができるのはただ隣に座り、その世界観に「ああ、面白いね」と共感することだけかもしれません。
育てる環境より守る心構え

子どもの興味を伸ばすために特別な教室を探す必要はないのかもしれません。台所で野菜の切り方を教えながら、切断面の模様に驚く子どもの反応を見てそう思いました。
大切なのは、その好奇心が自然に広がるための隙間を残しておくこと。
たとえば、なぜかプラスチック容器を集め始めた時、リサイクルに出そうとした私を止めて「これは未来のロケット部品なんだ」と真顔で主張したあの日のこと。
結局、押し入れの一角が「発明コーナー」になり、週末には妻が100均で小さな部品を買い足していました。
子どもの創造力を育てる最大の環境は、親の柔らかな覚悟なのかもしれません。
