仕事のメールと眠る子供の間で
昨夜も、あなたがノートパソコンの光に照らされながら眠る子供を抱いていた姿を見ました。その指先はキーボードと子どもの背中を往復し、肩は子守唄のリズムに合わせても決して力が抜けません。21時を過ぎても続く仕事のメールと、腕の中で眠りに落ちていく小さな息遣い。その間で揺れるあなたのまなざしには、いつか私たちが語るはずだった夢が、そっとしまわれていたことを思い出します。
無意識のバトン
仕事の電話会議を終えた途端、子どもの積み木が倒れる音に振り向くあなた。その切れ目ない切り替えに、いつも驚かされます。
『ガチガチの緊張から一転、柔らかな笑顔を見せる。重い書類を抱えていた手が、今度はおもちゃの電車を線路に乗せる。』
仕事と子育ての間のバトンタッチには、実は誰も気づかない努力が隠れてる。そんな気づきから、そっとデスクの片隅にお茶を置いたりするんですよね。
引き出しの中の夢
先週、あなたが書類の下に埋もれていたスケッチブックを見つけました。その皮の革表紙は、子どものお絵描きに使うクレヨンで少し色づいていて。
『ああ、これが』ってあなたが笑ったけど、その瞬間の目の奥の輝きは忘れられません。子育ての日々は、キャリアの夢に少しだけお休みを告げる時間。でも、それで終わったわけじゃない。
夜寝る前のスマホのメモ帳には、いつか企画を形にしたいアイデアがびっしり。子どもの寝顔に新しい希望を誓う、そんな夜もあるんですよね。
心の棚卸し
保育園のお迎え時間に、ジャケットのまま駆け込む水曜日。『仕事中にチャット通知が来ただけで、ふと「今日はピーマン食べてくれるかな？」って考えてた』って、あなたが言った日がありました。
仕事と子育ての間では、常に頭の整理が必要ですよね。『会議室の予定と、保育園の行事予定。』『プレゼン資料と、離乳食のレシピ。』
どちらも大切なのに、優先順位は毎日グルグル入れ替わる。そのせめぎ合いが、あなたの眉の間に刻み込まれた小さな皺。でも、そこがまた愛おしくて。
静かなる折り合い
昨日の夕方、ふと気づきました。子どものためにリビングの机を置いた場所は、仕事と育児の境界線を引く代わりに、わざと消していたんですね。
ノートパソコンの右側に色鉛筆を置き、左手に幼児向けの絵本を重ねたスタイル。『仕事の中断は子どものために』と諦めるのではなく、『仕事と子育てが混ざる空間を』と受け入れた。
その柔軟な発想に、僕は学びました。内なる葛藤の終わりは、完璧主義の終わりから始まるのかもしれません。
深夜のララバイ
結局はどっちも大事なんだ。だからこそ、どちらにも手の届く場所に置く。
23時過ぎ、あなたがようやくパソコンを閉じた。隣には、途中で眠った我が子の枕元に置いた今日の仕事のメモ。
『このまま眠るのか？』と聞く前に、『子どもの寝顔のすぐ隣』で、あなたは今日の仕事を締めました。
あなたが選んだ受け入れる姿勢は、仕事も子育ても『どちらかを選ぶ』という選択肢を拒否した、強さの証だったんですよね。その静かな決意に、僕はそっと毛布をかけるだけでした。