
洗濯物を畳みながら『ついでにタオルの収納変えてみたよ』とサラリと言った君の言葉。その何気ない一言に、ふと胸が熱くなりました。冷蔵庫のプリンが減っていても『ママはとっておいてくれたんだね』と子どもに話す君の機転。家庭に溢れる小さな愛情の断片を、そっと拾い集めてみたいと思うのです。
歯ブラシの向きが教えてくれること

洗面台に並んだ歯ブラシに目を止めた朝のことです。君のものだけが、なぜか歯ブラシケースに立てて、持ち手を下向きに置いてあるのに気づきました。
次に使う人が持ちやすいように――そんなことまで考えながら生活していたなんて。子どもの水筒を洗う時、僕はつい面倒に感じるのに、君は『明日も元気に学校に行けるように』と自然につぶやいています。
冷蔵庫に貼られた給食ノートの『ピーマン完食!』に赤丸を描く君の表情が、なぜか昨日も脳裏に浮かびました。
コーヒーカップの温もりに隠れた愛

忙しい朝のコーヒーブレイク。ふと手にしたマグカップの温かさにハッとします。
君がコーヒーを淹れる『ついでに』、いつも私のカップだけ湯煎で温めてくれていることに、結婚して十年目にしてようやく気づきました。
仕事の資料を印刷する『ついでに』子どもの迷子シールを作り、ゴミ出しの『ついでに』ご近所の新聞を届ける。そんな小さな『ついでに』の積み重ねこそが、家族の基盤を作っているのかもしれません。
僕のネクタイを直す指先のメッセージ

出勤前、君がネクタイのゆがみを直す指先。『ついでに今日も頑張って』と添えられる言葉が、なぜかプレゼン前の緊張を和らげます。
先月風邪で寝込んだ時、『ついでに』と差し出された生姜湯の本当の意味に気づいたのは、台所に残された生姜の皮を見つけてからでした。
フライパンの柄を無意識に反対向きに置く姿、子どもが落とした箸を瞬時に拾う動作――それらの全てが愛のアルファベットで綴られた手紙のようです。
紅茶カップに浮かぶ小さな革命

昨夜、君が読書中に『ついでに』と紅茶カップにティースプーンをカップの横にそっと置いているのを見かけました。それを見て僕は、台所で洗い物をしながら子どものコップを左側に並べ直してみました。
右利きの君が朝ごはんの支度をしやすいように。家庭で起こる小さな革命は、決して記録に残りません。
けれど歯ブラシの向きやコーヒーの残り香のように、確かにそこにある。気づかれないけれど、必ず誰かの心を温めているのだと思います。
小さな気遣いが積み重なる日々に、ほんの少しの温かさが欠かせないんだね。
