
夕食の支度をしながら
保育園の連絡帳に書かれた
『今日はお友達とおもちゃを分け合えました』
その一行の上に
あなたがこっそり添えた
赤いスティックシール
壁に貼られた成長曲線の脇で
静かに輝いている
データの線よりずっと温かい曲線を描いています
学びの種は日常の土に埋まっている

公園で拾ったどんぐりを
玄関に並べていた日が懐かしいですね
あの時あなたが子どもに
「来年は芽を出すかもね」と話した言葉
気づけば植物図鑑が
子どもの本棚を占領していました
雨の日のお散歩で
水たまりの跳ね方に熱中する姿を見て
あなたは「重力の実験ね」と言った
三年前のあの濡れた靴下が
今日の理科の授業で花を咲かせた
積み木の遊び方でさえ
「将来の空間認識力」と考えるあなたの
その先読みの優しさが
子どもの思考の根を育てている
複利よりあなたの笑顔が心に積み重なる方が力強い
「親の投資は
子どもの瞳の輝きに利子がつく」
おむつ替えの時間が育むもの

真夜中の授乳で
窓越しに見える満月を数えていたあの日々
今では子どもが
天体図鑑を持って夜空を指差す
当時のあなたの疲れきった顔が
最高の教材となった
「もうすぐ保育園に行く時間」の
騒がしい朝の支度も
あなたが毎日同じ順番で準備する
あのリズムの奥に
子どもが安心感を覚える時間の法則が
隠されていた
汚れたお絵描きを
捨てずに取っておいたフォルダー
今では成長の軌跡として
家族の宝物になった
エンターテイメントのプランナーが
仕掛けた仕掛けよりも
あなたの日々の習慣が
子どもの才能を育む土壌になっている
15年後のバラの蕾

先週子どもが突然
「パパの髪の毛が減ってる」と
真剣な顔で言った時
あなたは「分かるようになったね」と
静かに喜んでいた
「もうすぐ幼稚園で年長さん」
「小学生になったら」「中学生になったら」
「高校生になったら」
「大学生になったら」
「15歳になったら」
「大人になったら」
その未来の話をしながら
昨夜の子どもの寝顔に
15年後のバラの蕾が
ほんのかすかに見えた気がしました
「子育ての時間は
親の心に刻まれる
最も美しい年輪」
