
また見つけましたよ、娘のピンクのヘアゴムがノートパソコンのコードに絡まっているのを。あのピンクの輪が、仕事のバタバタと子育ての悩みが巧みに絡まってるみたい。最近の私たちの時間って、こんな風に絡み合っているんですよね。オンライン会議のウィンドウを閉じた直後に広がるランチボックスの残り、企画書のメモと書きかけのお便り表。昨日のニュースで『柔軟な働き方』を語る経営者の姿を、君が真剣な眼差しで見つめていた時、ふと思ったんです。会議室とおままごとテーブルの間で、私たちはどんなバランスを探しているんだろう。
見えない引き継ぎ
仕事の顔と育児の顔を切り替える瞬間って、静かな詩があると思いませんか。厳しい商談中の声が、廊下を走る足音を聞いた途端に柔らかくなる様子。世間は『マルチタスク』なんて言うけど、実際は…パワポの資料を作りながらも、冷蔵庫に貼る子どもの落書きをちゃんと褒められるあたり。研究者たちが『マルチタスク』なんて言葉を使うけど、本当は違う。スクラップ整理しながら会議の議事録を進める姿を見て、気づいたんです。君の中で、数字を追う目線と子どもを包む手のひらは連続しているって。
そういえば、次男が段ボールで作った『パパのパソコン』を、わざわざ君の隣に持ってきた日がありましたよね。あれは君の忙しさを真似したんじゃない。ただ、傍にいたかっただけ。子どもは『手がかかる』なんて思わない。切れ目のない愛情を見ているんですよね。
大切な断り方の価値
大切にしているのは、君が断る会議の理由。『子どもの送迎が入っています』と告げる声には、社長室を守るのと同じ覚悟が宿っています。取引先との契約日より優先する参観日、年間スケジュール帳に朱書きする授業参観の時間。引き出しの中では、昇進通知と子どもが描いた『ママお手伝い券』が同じ場所で輝いている。
柔軟さは野心の敵じゃない。家族のタイムスケジュールを戦略的に組む姿を見て、確信しました。経営学の教科書より、育児が育てるリーダーシップの方が深いって。
生産性の長ぐつ姿
企業が測る生産性と、私たちが感じる生産性は違うみたい。難航したプロジェクトの後に始まったリビングダンス、授業参観のために勇気を出して交渉した納期変更、スーツの袖についたクレヨンの跡、最高の勲章じゃない!在宅勤務が許されることより大事なのは、家がオフィスになじむことじゃなくて、オフィスが家のぬくもりを認めることなのかもしれません。
先週、泣きじゃくる娘をZoomに登場させたあの瞬間。君は社会人として『失態』なんて考えなかったでしょう?むしろ、画面越しに同僚の表情が緩んだのが、全てを物語っていました。あの笑顔が、心底うれしいって思えた瞬间!
語られない報酬
資産運用の話になると、みんな退職金や学資保険の数字を追います。でも私たちが残す本当の財産は別のところにある。君がプレゼンの総仕上げ中に私に渡す赤ちゃん、キャンプが中止になった日に即興で始めた家族会議、ママが交渉しパパが夕食を作る風景。そういう日常が、子どもたちに教えているんです。ミスマッチの靴下をはきながらでも、情熱と優しさは両立できるって。
ワークライフバランスなんて言葉では言い表せない。君が片手にホットコーヒー、もう片方に園からのお知らせを持ちながら証明しているのは、仕事も子育ても『選ぶもの』だということ。与えられるバランスじゃなく、自らデザインする選択なんですよね。
オフラインのつながり
これを書いている間も、君は洗濯物をたたみながら明日の提案書を考えている。付箋に残った小さな手垢が、君の能力を損なうはずもない。本社の人たちが知らない真実がありますよね。ブロックを色別に並べながら生まれるビジネスアイデア、誕生日会の準備をしながら練られる戦略図。あれらは全て、同じ集中力の産物なんです。
多忙な日々の本質は時間管理じゃない。会議で培った粘り強さが夜中の授乳に生き、職場で磨いた共感力が兄妹喧嘩の仲裁力になる。コードに絡まったあのヘアゴムは、単なる小物じゃない。キャリアと育児をともに歩む者たちの、ささやかな勲章のようなものですね。
